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Nozawa CAMARO L98 ヘッドスワップ

L98 ヘッドスワップレポート
このカマロ、ドラッグレースシーンではおなじみの車かもしれません。
2000年シーズンに参戦した全てのレースでクラス優勝している車です。 スペック的には、ほぼストック状態ですが、きちんとメンテナンスをしているので、常にベストコンディションで参戦している結果でしょう。
しばらく見かけなかったので、「どうしているかな?」と思っていたら、なんでもハワイに行っていたとか・・・
サーファーでもある彼のこと、本場で毎日サーフィン三昧と思いきや、 そこはさすが車好きですね~・・・
現地でヘッドを購入して、なんと手荷物で持ち帰って来たとか....恐れ入りました。


帰国後早速ヘッド交換のオーダーが入ったわけですが、作業に入る前にまずパーツチェックです...
交換作業に必要なパーツは全て揃っているかな?

ヘッド交換と言っても、ヘッドの他に各種ガスケット等が必要になりますが、 うちのメカの西村を義兄に持つ彼はEdelBlockヘッドセットと、それに必要なガスケット類を全て持ち帰って来ていました.... さすがに兄の影響は偉大ですね!!

ただ一つだけ。
アルミヘッドに換装する場合、ヘッドボルトは必ず新しい物に交換した方が良いので、 うちに在庫があったARPのものを使用することにしました。
この車、すでにMSD、ビッグスロットル、ハイレシオロッカーアーム、クロモリプッシュロッド等は装着済みなので、 今回のヘッド交換で、これらのパーツの性能をより引き出せるはずです。
作業開始!



早速作業に取り掛かります。

エギゾースト&インテークマニフォールドを外してヘッドを開けてみると、91年式にしては驚くほど良いコンディションです。

チューニングをする場合にとても大切な事なのですが、まずは元の状態が良くなければ、いくら良いパーツを取り付けても意見が有りません。

リフター、プッシュロッド、ロッカーアームも合わせてチェックします。 シリンダーのデッキ面も、ストレートエッジを当てて歪みが無いかチェックしましたが、いずれも問題有りませんでした。

ヘッドのボルトスレッドも、締め付けトルクが正確に掛けられるように、一度タップを通しておきます。
マッチポート加工
今回はせっかくニューヘッドを載せるのですから、併せてマッチポート加工をすることにしました。
インテーク&エギゾーストポートをリューターで削っていきます。
どこをどの程度削るのかは、ヘッドの性格やエンジンの使用目的によって変わってきます。
この辺のデータは各チューナーのノウハウになりますので、残念ながら詳しくは申し上げられません。
2~30年前のレースエンジンは大きければ良いみたいなところがありましたが、今は全く違い、目的にあわせてきちんと特性を出すようになってきています。
ここの形状次第で最大出力や最終的なパワー特性が大きく変わってきます。
マッチポート等の加工が終わったら、全てのバルブ当たり面とスプリングストローク、及びヘッドの歪みをチェックしておきます。
ニューヘッド取り付け
さあ、いよいよニューヘッド組付けです。
まずシリンダーブロック&ヘッドを入念にクリーニング。
その後、エアブローしてデッキ面をシンナーで良く脱脂しておきます。 ヘッドガスケットも同様に良く脱脂し、ヘッドを載せて規定トルクになるように3回くらいに分けてトルクレンチ締め付けます。
ちなみにシリンダーブロックのスタッドボルト用タップ穴にはシリコン等のガスケット剤を塗ってから組み付けないと、 後で水漏れなどのトラブルになることがあります。
今回はニューヘッドですので、一晩おいてなじませた後にもう一度締め付けトルクをチェックしました。
次にプッシュロッド、リフター、ロッカーアームをアセンブリー用のオイルを塗ってセットします。
こうしておくと組み立て後、初めてエンジンを回すときに、油圧が掛かってヘッドまでオイルが回ってくるまでの僅かな時間に、金属パーツ同士がオイルレス状態で擦れ合うのを防いでくれます。
インテーク、ランナー、インダクションボックス等を元の位置に組み付けた後、シリコンガスケットが乾くのを待ってからLLC(クーラント)、オイルを入れます。
水漏れ、オイル漏れ、フューエルラインからの漏れが無いかチェックしてから、火が飛ばないようにイグニッションを外してた後、スターターでクランキングし油圧が掛かるかチェックします。

油圧がOKであれば、イグニッションをつないで、いよいよエンジンスタートです....
あっけないくらい簡単にスタートしました。

点火タイミングをチェックしてから、ラジエーターのエア抜きのためにしばらくエンジンを回しておきます。
水温が上がってサーモスタットが開き始めると、クーラントライン内のエアが抜け始めます。
ライン内にエアが残っていると、キャビテーション(泡立ち)の原因になったり、ウォーターポンプがクーラントを送れなくなって、オーバーヒートの原因になりますから、入念に抜き取ります。
エア抜き中は、水位だけでなく油圧、水温も良く見ていてください。
ラジエーターのエア抜きが終わってから、キャップを締めて燃圧の調整を行いました。
しばらくブレークインをして、いよいよコンピューターの書き換えです。
ヘッド交換によって給排気効率がアップした分エアー量が増えていますので、それに併せて燃調を取り直しパワーアップを狙います。
ただしお客様のオーダーは普通に街乗りが出来ること!
Service Engine Soon警告灯の点灯はもちろんダメ! 渋滞でもエアコンが普通に使え、触媒などもノーマルのままで、自分でユーザー車検に行けることというのが条件です。
それを踏まえ、燃調、電動ファンの作動開始温度などのマップ書き換えをしました。
納車前の最終テスト
お客様に納車する前にロードテストに出掛けます。

かなりトルクが太っているようで、全開スタートをするとあのアドバンTNR045が食いつかず、2ndに入ってやっとグリップするという感じで、「ちょっと危ないかな?」と思いましたが、オーナーの野沢さんは、S30Zでさんざん0-400レースを走ってこられた方で、この手の乗り味には慣れているため、このまま納車することにしました。
このレポートを読んでコンピューターチューンを考えている方へ。
まずノーマルの状態で車が完調でないとチューニング出来ません。
これは今回の様なコンピューター書き換えはもちろん、その他チューニング全般に渡って言えることですが、 加速が悪いからエンジンチューンをとか、コーナーリングがイマイチなので足回りのチューニングをと思う前に、まずノーマルの状態での車のコンディションを良く把握してください。
ノーマルの状態で調子が悪い車=メンテがしっかり出来ていない車というのは、チューニング以前の問題になります。
砂上の楼閣のたとえのごとく、まずは土台をしっかりと!!